草資源を利用した和牛生産と地域環境保全

城前牧場(じょうぜんぼくじょう) 管理(かんり)組合(くみあい) 代表者 柏 篤

 

.地域の概況

 
(1)一般概況


 ●地域の概況

 立山町は、富山県中部より南東に細長くのび、常願寺川扇状地から弥陀ヶ原・立山・後立山連峰を含む広範な地域で、長野県大町市と境を接しており、豊かな穀倉地帯から山岳地帯へと変化に富んだ地形がみられる。

 面積は、308.79ku、人口は28,518人である。

 富山市から長野県信濃大町まで、90kmを5時間で通過する立山黒部アルペンルートは、中部山岳国立公園に指定され、立山をはじめ高さ日本一の黒部ダム、今も噴煙を上げる地獄谷、日本一の落差を誇る称名滝など変化に富んだ世界的スケールの観光地となっているとともに、立山は、日本三霊山の一つとされてもいる。

 今も岩峅寺から室堂付近にかけての立山の旧参道沿いには、古い石塔や石仏が無数に散在し、かつて信仰登山の盛んだった頃の様子を伝えている。 また、「立山博物館」の展示館には、立山の自然や立山信仰の歴史などが展示されている。

 また、稲作に特化している富山県の農業の中で、昔から和牛の繁殖・肥育も盛んであり、昭和40年代には100戸以上の和牛繁殖・肥育農家が存在し、県内では古くから立山牛の産地として知られている。

 城前牧場は、岩峅寺の脇を流れる白岩川の上流にあり、標高400〜600mの高冷地である。放牧地の総面積は45.4ha、うち改良草地は9.0ha、残り36.4haが林間の野草地となっている。

 
(2)地域において畜産業が果たしている役割・機能


 地域農業の動向としては、農家戸数、農業従事者数、経営耕地面積ともに減少傾向にある。また、県内同様
立山町においても、全農家のうち稲作の2種兼業農家が86%となっている。

 その中で、畜産農家戸数も年々減少傾向にあるが、経営規模は拡大しており、専業農家として地域農業の中で中核的な役割を担っている。畜産全体の生産額は479百万円で全農業生産額の約10%を占めている。

 また、良質堆肥の生産供給を行い、地力の増強に努めるなど、耕畜連携による地域農業の振興に貢献している。

 

.当該事例の地域振興活動内容

 
(1)当該事例の地域振興活動の内容と地域社会で果たしている役割・機能


  城前牧場管理組合の地域振興活動と地域社会で果たしている役割は、優良な和牛生産のみならず地域の環境の保全や地力増強など多岐にわたっている。

 主な、ものとしては、

 @ 町有林の低コスト管理

 A 優良な和牛子牛の生産

 B 県内の和牛繁殖放牧のモデル

 C 堆肥の還元による地力増強と耕畜連携による良質な農産物の生産

 D 地域イベント開催への協力と地元畜産物のPR

 E 耕作放棄田等での放牧による景観保全

 等があげられる。

 特に、近年は、畜産分野だけではなく、耕種農家との連携や地域環境の保全などの活動を通して、地域の中で重要な役割を果たすようになってきており、今後更に多面的な活動が期待されている。

テキスト ボックス: 県産牛肉テキスト ボックス: 耕畜連携テキスト ボックス: 散布 
(2)地域貢献図


 

 
(3)活動の成果に対する審査委員会の見解


 ●定着している夏山冬里方式の和牛繁殖

 20年近く、当城前牧場管理組合員は夏山冬里方式の和牛繁殖を営々と続けてきた。本県では、自然牧野を主体に放牧を実行している唯一の事例である。この間、組合員は牧野での分娩、シバ草地導入、シードペレットの利用など様々な技術にチャレンジしつつも大きな失敗もなく放牧技術を蓄積してきた点は高く評価できよう。また、放牧管理が省力的な飼養方法であるのみならず、繁殖成績、雌牛の耐用年数延長につながっている。

 

●地域振興に果たした役割

 同時に当管理組合は、有機米産地化への支援、町有林地の管理、近年特に問題視される安全な牛肉の供給等々地域の農林業の振興に多面的に貢献してきた。 

さらに、管理組合が蓄積してきた技術をもって展開している放牧を山地から山ろくの放棄水田へと裾野を拡げ、新たな地域振興に寄与している点について特に評価したい。

 

●地域における耕作放棄地増加

 農地荒廃は地域の崩壊をイメージさせ、農業の担い手や行政担当者に危機感が生じたことは否めない。特に山岳信仰文化に接する意味を持つ立山観光の参道と位置付けられる地域の崩壊ともなれば立山町としては由々しき問題であった。

 こうした背景にあって、耕作放棄地が多発している中山間地域とはいえ、平地農村ではとても成立しえない和牛の放牧という作目を選択したことは本県のような水田に特化した農業地帯にあっては画期的な発想といえる。今後の耕種側の放牧に対する理解と期待を高めた。

 

●土地利用調整の成功

 多数の所有者による零細な水田、さまざまなタイプの稲作農家が存在するなかで、水田に四足が入るという強い抵抗感や牛の脱柵の危険についての地域住民の危惧等に対して、管理組合をはじめ地域営農集団や行政の支援を得ながら利害の調整に当たり放牧地を集積した努力は高く評価されよう。

 米価の値下がりと生産調整田での適作物が見出せない中で、水田の耕作放棄化が更に増加する状況において本例は有用なモデルであるとともに、農地を保全することは稲作農家だけでなく地域の農家全体の課題であることを提起した意義は大きい。

 

●放牧が畜産農家経営に貢献できるモデルを示した

 放牧飼養が農家の経済的要請を満たすものか判断できず、放牧飼養体系への移行を躊躇する農家が本県では多い。放牧馴致に数年かかることなど、リスクを冒してまで放牧する意向は強くないのが一般的であろう。

 この点で、本組合ではすでに長年の経験から山林牧野においての放牧技術を修得しており、若干の投資を必要とするが、省力化、飼料費や削蹄費の節減などにより生産費がかなり減少することを実証した。

 

.当該事例の地域振興活動実施の詳細


(1)活動実施の目的と背景


 城前牧場が設置されるまでは、和牛繁殖農家は、舎飼による繁殖成績の低迷や連産性の低下等問題をかかえていた。この解決策として放牧が検討され、整備された牧場が無かったことから、わずかな頭数で林間放牧を試みたが、事故等が絶えず、当初の目標を達成するに至らなかった。

 

 一方、立山町は、所有する杉林の下草刈に多大の予算を支出していたため、低コスト管理の方法を模索していた。

 町では昭和56〜57年に亘り、草地等効率利用促進プロジェクト調査を実施し、一部改良草地を含む林間放牧の可能性について検討し、昭和58年に草地開発基本調査の結果に基づき、城前牧場設置の具体的な計画を樹立した。

 翌61年〜62年にかけて公社営畜産基地建設事業により、草地造成(20%)、看視舎、給水施設、隔障物の設置、道路整備等を行った。

 これにともない、放牧牛及び草地管理の一切を行う城前牧場管理組合が結成された。組合の構成員は地元の和牛繁殖農家及び肥育農家が中心となり、繁殖牛を放牧によって健康に長期に亘って利用しながら優良な素牛を生産し、地域及び県内に供給する基盤ができた。

 

 当組合の活動は、放牧を地域農業の中で有効に利用していくという視点から、「草資源の有効利用」、「放牧の多面的機能の活用」、「地域農業の持続的な発展」、「食料の安定的な供給」を目標に肉用牛の生産を通じて実現することを目的として活動を展開している。

 立山町はもとより富山県内では、子牛価格の低迷や高齢化、担い手の不足から肉用牛飼養農家の減少に伴い肉用牛飼養頭数も減少傾向にある。このような状況下で、城前牧場管理組合は、立山の豊かな草資源と自然を生かし、付加価値の高い黒毛和種生産を目標に活動を続けている。

 具体的には、林間地を利用した放牧、改良草地に半永年的なシバ草地等の造成、地域・県内肥育農家への優良素牛の供給、耕作放棄水田の放牧による農地の保全などの活動を通じて、地域畜産の振興のみならず、地域農業の発展や環境の改善に大きく貢献している。


(2)目的の達成内容と成果を生むまでの過程


 ● 家畜の管理と草地改良の取り組み

 当牧場の管理の基本は夏山冬里方式であり、繁殖管理の省力低コスト化と繁殖成績の向上を目指している。

 放牧期間は5月〜10月の半年間で、黒毛和種の妊娠牛を放牧している。看視は各組合員間で調整し基本的に毎日行うこととしている。分娩前には各組合員の牛舎に戻し分娩させているが、放牧に慣れた牛で気象条件が安定している時は牧場で分娩も実施している。牧場で生まれた子牛は下痢などの病気の発生も無く、運動量も多いため健康に育つが、分娩させる場合は事故が生じないよう看視を十分に行うなど注意を払っている。

 草地管理と個別経営との労働競合を回避するため、組合員の分担を調整し、より効率的な牧野管理と民主的な牧野組合運営を行ってきた。

 当牧場は標高400メートル以上の山中にあり気温が低く土壌も礫が多い。また、道路の便が悪く急斜面が多いため機械による造成が困難である。このため、オーチャードやトールフェスク等の永年牧草を播種しているが定着が悪く、ワラビが優先してくる状態であった。このため半永続的で省力的な草種として、平成12年度からシバを導入し、毎年野シバやセンチピートのポット苗の移植等により徐々に草地を改良してきている。

 また、当組合に対しては、町の熱心な支援体制があり、県の行政や試験研究の技術者が畜産農家とともに現場に合った草地改良や家畜管理方法の実証がなされている。

 草地管理に関しては、優良牧草の種子の播種試験を行い城前牧場の土壌・気候条件に合った草種を選定するとともに実証試験を実施し、シードペレットや、シバ草地の定着拡大などにより、牧養力の向上につとめてきた。更に、定期的なワラビ等の雑草駆除を行い、草地の維持更新を行っている。これにより、放牧頭数は当初の16頭から現在23頭に増加してきている。

 また、県家畜保健衛生所の指導を受け、ダニの駆除や0-157の検査等を実施し、モデル的な放牧衛生管理プログラムを実施している。

 

● 家畜改良への取組み

 県が家畜改良事業団の種雄牛の中から選定した推奨牛を積極的に利用し、肉質改善を目標に種付けし、優良な素牛生産に努めてきた。また、子牛の育成技術についても組合員で情報交換や研修会を頻繁に行うなど技術の向上に努め、地域はもとより県内肥育農家への県内産優良肥育素牛の供給に大きな役割を果たしている。更に、当牧場の組合員から生産された子牛は、昨年実施された県の共進会で最優秀賞を受賞するなど、近年各共進会等で常に上位の成績を収めるようになり、県内では高い評価を受けている。

 

● 町有林の低コスト管理

 城前牧場は、本来町有の杉林の一部を切り開いて設置されたもので、現在でもその8割以上が林地である。人力による杉林の下草刈りにかえて、放牧牛を利用した町有林の管理は非常に大きな効果をあげ、未利用資源を活用した低コスト畜産のモデルとしても、県内では高く評価されている。

 

● イベント等への参加と地域畜産物のPR

 当管理組合は、町、JAが開催する地域イベント等へも積極的に参加し、また、立山牛はもとより地元畜産物の試食等を実施し、地元農畜産物の消費者へのPRならびに消費拡大にも努めてきた。

 

 

 

● 堆肥の還元による地力増強

 肉用牛農家から生産される堆肥は、稲作農家や蔬菜農家に利用されるばかりではなく、地元の営農組合を通じて40haの水田に散布し、その産米は特別栽培米として販売するなど耕畜連携による良質安全な農産物の生産の一翼をになっている。

 

● 耕作放棄田等での放牧と景観保全

近年、立山町では、中山間地域を中心に耕種農家の高齢化や害獣の発生等により休耕田が増加し長年の不作付け(10年間放置の圃場もあり)により、カヤなどが優占するとともに低木が入り込むなど、荒廃が進行し、優良農地の維持、農村の景観保全から問題になっていた。

このような中で、昨年(平成14年)畜産の省力低コスト化の観点からも未利用ほ場に生長するカヤなどを草資源として有効に活用するための手法として、耕作放棄地への放牧について、組合員と地域住民、地権者との話し合いが持たれた。当初、県内では他に水田での放牧事例が無く、地元の不安が大きかったため、他県の事例や放牧方法等を示し説得を行ない、小規模での試験的な取り組みとして実施することとなった。放牧地には、不耕作地約1haのほ場周囲に牧柵(有刺鉄線と電気牧柵の二重張り)、給餌・給水施設を設置した。

放牧牛には、城前牧場で放牧経験のある妊娠中の繁殖和牛で、事前にピロプラズマやO157等の衛生検査を行い健康状態が良好であることを確認した3頭を放牧し、日常、組合員が給水施設の衛生管理、牛の健康状況や脱柵の防止等に注意して監視に努めた。試験放牧の結果、牛は放牧後電気牧柵にすぐ馴れ、当初心配した脱柵も無く、自生のカヤや下草がほぼ食べ尽くされ、フスマ等の補助飼料の給与はほとんど必要がなく、踏圧により株が小さくなるなど景観の改善効果も大きかった。なお、臭気、害虫等による畜産環境汚染の問題も発生しなかった。また、副次的な効果として、放牧時は周辺のほ場に野猿の姿が見えなくなったことなど、獣害防止対策としての効果もみられた。

一方、問題点としては有刺鉄線の設置に労力を要したこと、放牧時期の遅れから、硬化したカヤの茎部の残食や、蹄圧により畦畔の一部が崩壊したことなどがみられたが、耕種農家の感触は概ね良好であり、理解が得られた。

 

 今回は、試験的な実施であり脱柵防止のため有刺鉄線と電気牧柵(三段)の二重張りとしたが、通常は電気牧柵だけで放牧可能と考えられ、1haの面積であれば柵の設置に2〜3人で約半日、施設費は30〜40万程度と、労力及び経費面からも、十分普及可能な技術であることが確認された。

 今年度は、5月中旬から、同地区で昨年同様放牧を行っており、更に不作地約3haに拡大を予定している。関係者は、他県の事例から3〜4年間放牧すれば雑草はほとんど消滅し、当該地が農地として再活用できるようになると期待されている


(3)現在の課題と新たな展開方向


● 地域振興活動の波及効果の可能性

 農畜産物の価格低迷や畜産公害、BSEの発生等により、更なる低コスト化と環境への配慮及び畜産物の安全性が求められている今日、これからの肉用牛経営を行っていく上でも大変有効な対応策の一つと考えている。

 また、地域未利用資源である草を有効に活用し輸入飼料に依存しない大家畜生産を行うとともに、農業の持つ多面的な機能を県民に実証するモデルとして、城前牧場管理組合の活動は、重要な指針を与えてくれる可能性が大きい。

 

● 今後の活動の方向・課題等

 本県農業は、水稲の2種兼業農家がほとんどを占めている。その中で、立山町においても、中山間地を中心に耕作放棄地が増加してきている。耕作放棄地は、雑草種子生産の場や病虫害の温床となるばかりでなく、それ自体が景観を損ねる原因となる。更に大きな社会的影響としては農業生産に対する活気を低下させ、集落機能が停滞することである。しかしながら、これに対する有効な対応策が見当たらないのが現状である。

 また、畜産サイドでも高齢化や環境問題などにより経営の縮小や中止が表面化している。 

 その双方の問題点を解消する対策の有効な一手法として、今後荒廃水田を活用した繁殖和牛の放牧が、非常に注目を集めている。 

 また、最近では、子供たちが牛(特に和牛)を見る機会はほとんどないため、町内外から、子供連れが牛を見るため多数訪れている。このため、今後、子供達に放牧牛を観察させたり、地場産の牛肉を試食させる等、命と食のかかわりを気づかせるような体験の場所を提供することにもなる。

 今後、放棄水田の放牧活用を普及していくために、優良実証事例を増やし耕種農家が安心して放牧の場として、提供できるような体制や指針作りが必要である。更に、放牧面積を拡大していくためには、積雪地帯の当地域では恒久的な牧柵の設定や放牧可能な繁殖和牛と管理者の確保も重要である。

 いずれにしても、景観維持、労力やコスト、生き甲斐対策など種々の要因を総合的に検討してこの種の技術を積極的に取り入れ、当組合を核として畜産農家が地域農業のみならず地域の中で大きな役割を果たしながら存続拡大を図っていくことが重要な課題である。


(4)活動の具体的な実施体制


●城前牧場管理組合の概要

 城前牧場管理組合は、立山町の和牛繁殖農家が中心となった8戸が構成員となり、昭和61〜62年の公社営畜産基地建設事業をきっかけに誕生した。

 本来、当牧場は、地域畜産振興と併せて、放牧により牛に下草を食べさせ、町有林を省力的に管理する目的で設置され、立山町の和牛繁殖農家を中心とする組合員で構成されている。

 当組合では、「放牧で健康な牛を作る。」ことを基本理念として、草地管理や組合運営に取り組み、県内でもモデル的な和牛放牧の牧場となっている。 組合員数は、県内の畜産農家が減少する中現在7戸と減少したが、放牧頭数は、当初の16頭から、現在は草地改良等を進め牧養力を高めてきた結果23頭を放牧している 城前牧場は町有であり、城前牧場管理組合がその管理を委託されて行っていることになる。業務内容の主なものとしては、牧場施設の管理及び利用、草地の維持及び改良、運搬車の管理及び利用である。

 更に、最近では、城前牧場での放牧技術を応用し、雑草が繁茂した耕作放棄田等で放牧を実施し、省力低コストな放牧方法並びに地域の農業環境保全や景観保持など多面的な活動を実施している。

 

 ● 城前牧場管理組合組織図

                                                                                        @施設管理

                                                                                        A看視

   組合長        副組合長      理 事                   B会計

                                                                                        C車両管理

                                                                                        D事務局

監 事                       (構成員7名)               

                                                      (役 員3名)

 

 ● 活動概念図

 

        城前牧場(立山町所有)

         管理委託

                預託(牧場利用)

 

        城前牧場管理組合          牧場管理

                                                                                                  地域環境の保全

           組合員      和牛繁殖農家

       (立山町)        肥育農家     

                   

優良素牛の供給

立山牛の生産    (富山県家畜市場)

 

 県内肥育農家        県産牛肉の生産

 


(5)活動の年次別推移


 <<活動の年次別推移>> 

年 次

活動の内容等

成果・問題点等

 

昭和56〜57年

 

草地等効率利用促進プロジェクト調査の実施

 

 

 

 

昭和58年

草地開発基本調査の実施

城前牧場の概要

 標高:420m〜630m

 斜度:45度(平均)

 土質:粘土質

 気温:-10℃〜27℃

 最大積雪深:200cm

 

 

 

昭和61〜62年

 

 

昭和63年3月

公社営畜産基地建設事業により、道路整備、草地造成、給水施設設置、隔障物整備、看視舎整備等を実施

城前牧場管理組合の設立

 牧場施設の管理及び利用

 運搬車の管理及び利用

 草地の維持改良 等を実施

牧草地  9.0ha

野草地 36.4ha

 計  45.4ha

 

預託料金:200/

 

 

 

 

平成元年〜

草地更新

牧場に適した草種・牧草の選定試験

ベントグラスの導入

 

 

 

平成3年〜

起伏修正による草地改良

定期的な草地更新

草量の確保と放牧事故の防止

 

 

 

平成8年

牧柵の更新

脱柵の防止

 

 

 

平成8〜12年

シードペレット試験の実施

発芽は良好であったが、野草にまけ、定着しなかった。

 

 

 

平成12年

貯水槽及び配管の改善

シバ移植試験の実施

水枯れの防止による脱柵・事故の防止

 

 

 

 

平成13年〜

シバの移植及び種子の播種

ワラビ駆除試験の実施

牧養力の向上による、放牧可能頭数の拡大

 

 

 

平成14年〜

耕作放棄地での放牧を実施

地域環境の保全

立山牛のPR

 

 

4.活動の評価

 


 ●和牛の放牧に対する懸念

・ 休耕田へ牛を放すことについて、逃げ出し周辺の農作物に被害を及ぼすこと

 また、蚊・ハエ等の多発が懸念されることから、地域の同意がなかなか得られ

 なかった。

・放牧した結果、当初懸念された牛の逃げ出しもなく、また、蚊・ハエの多発生

 もなかった。

・むしろ、野猿等による農作物被害が多発していたのが、放牧されたことで皆無と

 なり、地区住民が喜んでいる。

 

●農地の荒廃と地域景観の保持

       水田転作の強化により未整備田でかつ半湿田である休耕田は年々荒廃し、雑木・雑草が繁殖し、地域景観をそこね、また、水稲に対するカメムシ被害の発生源にもなっていた。

       中山間地域における水田転作

       和牛の放牧で、雑木の枝葉や雑草の菜食により、転作田の草刈りが不要となり景観の保持になった。

       転作田の畦畔が崩れ境がわからなくなると反対していた人たちも、畦畔の崩れが少なく、むしろ草刈り手間がかからないことから放牧に対する理解が得られた。

 

 

5.まとめ

 


 城前牧場管理組合は、町有林の管理と繁殖和牛の放牧を行う目的で、昭和63年に立山町の和牛繁殖農家8戸が構成員となり誕生した。

 城前牧場は町有であり、城前牧場管理組合がその管理を委託されており、その主な業務内容は、町有林の管理を中心に牧場施設、草地の維持・改良及び運搬車の管理等である。  

城前牧場は県の和牛繁殖牧場のモデル的な役割を果たすとともに、県内肥育農家への優良和子牛の供給という畜産生産振興上重要な位置を占めている。

 また、良質堆肥を地元農地に還元し耕畜連携による特別栽培米の生産や地域イベント開催の協力と地元畜産物のPRなど、地域の農業振興並びに畜産振興に大きな役割を果たしている。

 更に、最近では、城前牧場での放牧技術を応用し、雑草が繁茂した耕作放棄田での放牧を実施し、優良農地の維持や地域の農業環境保全や景観保持を行ってきている。

特に耕作放棄田の増加に有効な対策が見出されない中、地域においても水田の維持から非常に有効な対策として注目を浴びてきている。

 このように当組合は、地域の中で農業生産の担い手として重要な役割を果たすようになってきており、今後更に多面的な活動が期待されている。